アンテロープに行って驚くのは、これだけ名前が知られ、多くの人が訪れている名所なのに、人の垢を感じない、という点です。人の雑踏やギラギラした商魂を感じません。
あるのは大自然と古代ロマンのみ。それはひとえに、アンテロープがインディアン居住区内にあり、先住民によって管理されていて、アメリカ連邦政府でさえ、開発に手が出せないからです。
自然を愛するインディアンは、ツアーの参加人数にも制限を設けています。ここは、グランドキャニオンやセドナといったアリゾナの有名な自然の観光名所からさらに一線を画した、先住民ナバホ族の聖地、パワースポットです。
日常の喧騒から離れ、音もなく、時も止まります。そんな古代の神々が住む異世界で癒されたい、というあなたには、必見の秘境です!
一方で、秘境ゆえに、アクセスしやすいとはいいがたく、田舎なので、宿泊施設や食事処も数が限られます。
「ペイジ」という街の一角に、すべてが歩ける範囲で集中しています。古き良き小さな街、ペイジ。先住民に経営・管理され、地元密着型のアットホームな雰囲気です。
アメリカにありながら、マクドナルドやバーガーキングといったフランチャイズは、地元になじまず、成り立たない地域なのです。街が小さすぎるせいか、アンテロープに特化した観光本などはあまり存在しません。
すべては地元住民の口コミです。私が地元の人たちに聞きながら歩いたアンテロープキャニオンのあるペイジの街の見どころ、食べどころ、備えどころをここでお伝えしていきたいと思います。
サクっと読むための見出し
まずレンタカーを手配しよう!
アンテロープへの道のりは、途中のフラッグスタッフまで、電車などのアクセスもあるものの、本数や距離、時間を考えると、断トツ、レンタカーです。
運転できない人は、ツアーに参加するのが一番です。ラスベガスやロスアンジェルス、州都フェニックスから、多くのツアーが出ています。
▲レンタカー前にて、父と父のガールフレンド
私と旦那はフェニックスメトロエリアに住んでいて、自分たちの車ももっているのですが、わざわざ近くでレンタカー(日産ノート)を借りて、家族4人で向かいました。
フェニックスの町中からアンテロープまではおよそ300マイル。4~5時間のドライブです。アリゾナは広い。
南のフェニックスから、北端のペイジまで北上中、万が一、自分たちの車が故障してレッカーで運ばれる、という事態は避けたかったのです。またちょうど中間地点にあたるフラッグスタッフという町は、山間地帯で標高2000メートルあります。
私たちが出発したのは11月初旬。下界フェニックスは気温25度前後と、最高の季節ですが、北部のフラッグスタッフやペイジは雪が降ってもおかしくない時期でした。
ノーマルタイヤの自家用車で行くのは危険かな、とも思いました。(実際、走ってみると、フラッグスタッフの路上に雪はありませんでしたが・・・サイドにはうっすらと雪が積もり、美しい景色を楽しめました)。
車で行くと、素敵な風景に出会ったりして、思うがままに、臨機応変に止まったり、写真を撮ったりできるのも利点です。
途中、グランドキャニオンを横に眺めながら、ルート89を北上していくと、キャニオン全景をパノラマで見渡せる絶景スポットがあって、思わず車を停めました。先住民が出店を広げ、銀製品のアクセサリーなどを売っています。
1つ1つに意味があり、力を持つという、人気のインディアンジュエリー。
▲アンテロープキャニオンの絶景@ルート89。
絶景に息をのみながらカップルたちが次々と車を停めています。うーん、若いカップルには最高のスポットですね・・・。というわけで、目的地に向けても、彼女に向けても、レンタカーでのアプローチをお勧めします!
事前にツアーの予約を!
アンテロープは、インディアンが管理するので、ナバホ族のガイドなしには中に入れません。
もっと細かくいうと、アンテロープには「アッパーアンテロープ」と「ローワーアンテロープ」という2つの渓谷があり、多くの観光客が訪れる「アッパーアンテロープ」は、事前にツアーの予約をして、先住民のガイドを頼まなければ、ゲート内に入れないのです。
アッパーは、渓谷と地上の段差がないため、あまり歩かせず、子供やお年寄りにやさしいツアーです。ローワーは階段や狭い通路を抜けていかなければなりません。アッパーには、頭上に太陽が昇るとき、光のカーテンが渓谷内に差し込む、美しい撮影スポットがあります。
ローワーにはそれはありませんが、アッパーと違い、特にツアー事前予約やガイドなどは必要なく、駐車場に車を停めて、淡々と渓谷へ歩いていくことになります。
74歳の父を同行する私たちは、アッパーを選びました。なので、事前予約は必須です。特に混む、シーズン中の4月~10月にアンテロープを訪れる場合、早めの予約をお勧めします。
時間帯ごとに人数枠が決まっていて、いっぱいになるとキャンセル待ちです。私たちは11月上旬でオフシーズンだったので、たぶん当日飛び込みでも大丈夫だったでしょうが、春夏秋冬を問わず、世界中からプロ・アマチュア写真家が団体で訪れるアンテロープです。
油断は禁物。それに光のカーテンを見るには、太陽が頭上に上がる午前11時から午後1時の間が勝負なので、いち早く正午のツアーを押さえるべきです。
私は5カ月も前から、10も20もある、すべてのツアーの料金や時間、対応にリサーチをかけ、当日の服装や靴の選び方などの質問をメールで送っていました。
下にご紹介している1社が、オーナーみずから丁寧に4回も返事をくれたので、そこに決めました。
サイトもごちゃごちゃしていなくてわかりやすいので、ツアー探しに迷ったら、ぜひここへ。午前11時半の100分ツアーで1人45ドルだったでしょうか。周りと比べても良心的な値段です。
アメリカ在住の方は、こちらの観光ツアー会社がおすすめなので、気になる方は参考までにどうぞ。
Antelope Canyon Tours, Inc.
アッパーアンテロープへ行く方は、早め早めのツアー予約をお勧めします。
ちなみに宿の予約ですが、アンテロープの場合、まずツアーの予約ありき、という感じで、だいたいのホテルが、ツアー出発地の周辺に固まって建っています。私たちが泊まったベストウエスタンプラスも、ツアー会社の事務所まで歩いて1分のところにありました。
バイキング朝食付き。どこも似たり寄ったりだったので、ツアーを中心に考えて、近いところに予算に合わせた宿をとるといいと思います。
砂漠気候に合わせた服装で!いよいよアンテロープ入り
アリゾナは砂漠ですから、朝晩の寒暖差が激しいです。重ね着をお勧めします。
11月9日、私たちのツアー当日の気温は、10度前後。セーター、ジーンズ、ダウンジャケットに手袋・マフラーです。砂が入らず、楽に歩けて、暖かい、ということで、UGGのような、もこもこフラットブーツを履いていきました。正解でした。
昼間、太陽が現れると突然暑くなるので、水もお忘れなく。それとホテルでトイレを済ませて、ツアー事務所に向かう方がいいと思います。事務所にはトイレが1つしかなく長蛇の列です。
出発10分前になると、点呼で呼ばれます。参加者は、数台のトラックにそれぞれ振り分けられます。
え、これに乗るの?というようなワイルドなトラック。窓はなく、屋根に幌がついているだけで、むき出し。みんな横向きになって、トラックの左右にある長ベンチに、背中合わせで座ります。前にはつかまる鉄製のバーがあります。
寒風ぴゅーーーー。オフシーズンの11月から2月は手袋、必須です。くるまる毛布も事務所で貸してくれます。1台に15人ぐらい乗れるでしょうか。ガタゴト、ガタゴト。結構なスピードで、砂漠の中を走り抜け、ナバホ族のゲートをくぐります。
ほんとに砂漠と渓谷以外、なにもない。露店も簡易トイレもロッジも観光案内所もレストランも何もない。なんてだだっ広いんだ。
20分ぐらい走って、アンテロープの入り口が見えてきました。ガイドさんについていきながら、中に入ります。
▲アンテロープキャニオンのガイドさん
うわぁぁぁ。
これはどっちが天でどっちが地なのか。赤土の地層が微妙な色の違いで何層にも折り重なり、うねり、峡谷を作っている。天井の隙間から太陽の光が差し込み、地層を部分的に照らして、光のカーテンを演出する。
なんて幻想的、神秘的・・・。神々しいぐらい。息をのむ美しさです。
音も雪のように吸い込まれて無の世界です。
ガイドさんは「何百年何千年もの年月をかけ、上流の水が渓谷を流れるたびに浸食で壁を削り、土の層を作りあげます。渓谷に吹く風の風化も渓谷の形成に影響を与えます。数年前、モンスーンシーズンに、上流で降った雨が鉄砲水となって渓谷を襲い、観光客9人が犠牲になりました」という説明をしていました。
大自然の美しさと怖さを改めて認識する思いでした。ガイドさんは写真のポイントをよく知っています。渓谷の中ではフラッシュをたかないほうが、素敵な写真が撮れることも教えてくれました。
▲アンテロープキャニオンで記念に撮ってもらいました。
ガイドさんと仲良くなって、自分だけの素敵なポートレート写真を作ってください。ここは、頭上の光が一部の地層を照らし、足元にはちょうど腰掛のように岩がせり出している撮影スポット。
旦那と私は、互いに腰掛に座って交互に撮り合ったところ、顔の凹凸がいい感じで光と影を作りだしました。旦那の写真が格好よく撮れたので、ひそかに葬式の写真にすることに決めました。笑
▲神秘的な雰囲気の中、夫も撮影してもらいました。
家族写真向きのスポットも教えてくれました。奥行があり、渓谷のダイナミックさもわかるポイントでは、ガイドさんに家族写真をお願いしました。
▲記念に家族でも写真を撮りました。
撮りなれているせいか、絵ハガキみたいに絶妙な構図です。写真も、思い出も、赤土のセピア色。大事に大事に保管しています。
遠かった、寒かった、でも来たかいがあった!山の頂上を制覇したような、あのすがすがしさは、今も忘れません。
11月上旬というのは案外穴場です。まだ暖かい10月までは人混みでいっぱいです。が、観光客が引く11月は、写真に人が映りこむほど混んでいないし、ガイドさんは余裕があるから写真を撮ってくれたり、よいスポットを教えてくれたりもします。
寒くはなりますが、雪が降るほどではありません。シーズン料金もとられず安いです。シーズンの直前直後というのは、狙いどころかもしれません。モンスーンシーズンでもなく、鉄砲水の心配もなくて、かえって安全です。
アンテロープは、冬季閉鎖するグランドキャニオンと違い、年中開放されているわけですから。訪問の時期も一考です。
昼におすすめ、夜におすすめのお食事処 in ペイジ!
地元の人たちから口コミで集めた、ペイジおすすめのお食事処をここでご紹介します。ちょっと急ぎの昼ご飯、ゆっくり楽しみたい晩御飯の2つ。おいしいです!
ホテルやツアー事務所から徒歩圏内。ペイジの中心部にあります。
ちょっと急ぎの昼ご飯は、メキシコ料理店「El Tapatio」
早い。おいしい。フレッシュ。私は、ビーンズやライス、タコス、牛肉などが盛りだくさん の「きょうのランチの一皿」みたいのを頼んだのですが、ひとつひとつがとても新鮮でおいしかったです。家族みんなで交換しあったりして、魚介系も楽しみました。
ボリュームがあり、リーズナブルで、いろいろな種類のものが楽しめます。ツアーの時間が迫っている、ちょっと急ぎの人たちに特におすすめです。スタッフがてきぱきしてて、明るいジョークを飛ばしてくれたりもします。
25 Lake Powell Blvd. Page, AZ 86040
世界各国の人たちと触れ合う晩御飯は、アメリカBBQ店「Dam Bar & Grille」
ボリュームたっぷり。アメリカならではのBBQグリル店であり、夜は観光客と地元人がふれあうバーになっています。私はジュージューに焼かれたビフテキにベイクトポテト、大きなサラダにビールのジョッキーをいただきました。
長旅のあとの晩餐に最高!すべてぺろりと平らげました。おいしかった!旦那はバーに居座り、ドイツから来たという観光客と大いに盛り上がっておりました。こうしてペイジの夜は更けていきました。
644 N Navajo Dr, Page, AZ 86040
アンテロープは事前の備えがカギ!
いかがでしたか?
弾丸ツアーもいいのですが、秘境・アンテロープに関しては、レンタカーの手配やツアーの予約、服の装備など、それなりの知識と下準備が、旅の楽しみを左右します。
大自然には美しさと怖さが共存するもの。備えあれば憂いなし、の心持で、秘境への旅に挑んでほしいと思います。